ベビーフェイスと甘い嘘
「質問は後で。とりあえず降りて」
「……いた……っ」
車から降りようとすると、関節が悲鳴をあげるように痛んだ。
「ほら、つかまって。手を回して」
もたれ掛かるように支えられたまま、九嶋くんの部屋に足を踏み入れた。
「ちょっと待っててね。とりあえず熱測って」
リビングのソファーに座らされ、はい、と体温計を渡される。そのまま九嶋くんはリビングの奥のドアを開けて中へと入って行った。
九嶋くんのアパートには何度かお邪魔したことはあるけど、1LDKの間取りの部屋なので、寝室は見たことが無かった。
「お待たせ。布団もあるけど……身体痛むだろうから、とりあえずベッド使ってくれる?シーツは替えといたから」
「でも……」
さすがにベッドに横になるのは厚かましすぎる。
遠慮する私に、九嶋くんはため息をついた。
「あのね、ねーさん。……翔がさ、ねーさんの事心配してたんだって。自分のせいでママがパパに怒られたんじゃないかって」
「その怪我って、昨日の話を旦那に確認したら叩かれたんじゃないの?……だったら、話し合えばって言った俺にも責任あるから」
「今の状態で芽依さんとこ帰っても、翔が不安になるだけだと思う。俺も心配だし……せめて勤務の時間が終わるくらいまではここにいてよ」