ベビーフェイスと甘い嘘
「ぼやっとしてたら、タオル冷えちゃうよ」
察してくれたのか九嶋くんはそう言ったけど、一向に動こうとしない。
「智晶ちゃん、手伝ってくれるの?」
芽依がニヤリと笑って、ようやく二人にからかわれているのだと分かった。
「もぅ!一人で出来るから!」
芽依の手からタオルを奪う。
「ははっ、元気出てきたね」
九嶋くんは笑いながらリビングへと戻って行った。
「はい、茜ちゃんばんざーい」
……みんな子ども扱いなんだから。
まだ抵抗するほどの元気はないので、素直に両手を挙げた。
長Tシャツが頭からスポッと脱がされる。
「っ……茜ちゃん……」
驚きで目を見開く芽依。
驚くのも無理はない。
両腕や肩についた大きな痣。キャミソールや、下着の中にもたぶん痣があるはずだ。
朝の時点で青色だった痣は、黒っぽい紫色へと変わっていた。
「酷いもんでしょ?……背中のほうは手が届かないから手伝ってね」