ベビーフェイスと甘い嘘

わざと明るい声を出す。


芽依はうなずきながら、そっと替えの服を差し出してくれた。


最近は芽依の家に泊まりに行くことが多かったから、着替えは翔の分も一式置いてあった。

まさかこんな時に役立つなんて思わなかったけど。


「ありがと。着替え置いといて良かった」


そう笑いながら言って、キャミソールとブラジャーも脱ぐ。後ろに回した手に鈍い痛みを感じた。


ちらりと胸元に目をやった芽依がまた息を飲んだような気がしたけど、そこには触れて欲しくないから隠すように膝を抱えながら背中を向けた。


背中に温かいタオルが当てられる。首元や肩、腕や腰回りを拭いた後で、背中にひたり、と冷たいものが当てられた。


ペタッ、ペタッと位置を変えて何回も繰り返されるその冷たい感触を背中で感じていると、嫌でも固いフローリングに何度も身体を押し付けられたことを思い出した。


「茜ちゃん」


「何?芽依」


「もう、修吾さんと話し合う合わないの問題じゃないってのは、分かってるよね?」


「……うん」


翔が話したのか、九嶋くんから聞いたのか……芽依は全ての事情を知っているようだった。



「しばらく家にいて。翔だって夏休み中だから大丈夫でしょ?あと……」


「あと?」

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