ベビーフェイスと甘い嘘

迷惑をかけたくない、心配をさせたくないから話をしない、というのはただのエゴだ。


「へへっ。茜ちゃんにお礼言われちゃった」


嬉しいな、と芽依が泣き笑いの表情になった。


ほらね。

私が自分に素直になるだけで、正直な気持ちを伝えるだけで、こんなにも喜んでもらえるんだもの。


「九嶋くんにもずいぶん迷惑かけちゃったな……」

「智晶ちゃんは、迷惑だなんて思ってないと思うよ」

「いや……迷惑でしょ……」


朝から熱を出して、送ってもらうだけならまだしも、図々しくお邪魔して、しかもベッドまで借りてしまったのだ。


返したばっかりなのに、また借りができちゃった。


……今まで一つも返した気になれないのは置いといて。


「そんな気にしなくてもいいのに。智晶ちゃんの方から家に連れてくけどいい?って言ってくれたんだよ」


「そうなの?」


「うん。茜ちゃんの様子がおかしいって連絡くれて、朝の様子を智晶ちゃんに説明したら、『じゃあ、今芽依さんとこに帰ったら、翔が気にするんじゃない?』って言ってくれたの。ちょうど翔からも自分のせいでママとパパが喧嘩しちゃったって聞いてたから、智晶ちゃんがそう言ってくれて助かった」
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