ベビーフェイスと甘い嘘

「怒ってないよ。そこまで信じられる人がいるのは羨ましいと思って」


「だったら、智晶ちゃんも私達を信じてくれればいいでしょ?簡単な事じゃない」


「じゃあ、味方になってくれるんだ」


「うん。一番は茜ちゃんだけど、智晶ちゃんが茜ちゃんに嫌われなければ、ずーっと味方でいてあげる」


「そっか。じゃあ、ねーさん、俺のこと嫌いにならないでね」


九嶋くんがにこにこと笑いながらそんな事を言うから、思わず真面目に言葉を返してしまった。


「ならないよ!……こんなにしてもらって九嶋くんのこと、嫌いになるはずないじゃない。九嶋くんには、ほんとに感謝してるんだから。……いつもごめんね。……ありがとう」


てっきり『そんな真面目に返さないでよ』なんて言われるかと思ったのに、私の言葉を聞くなり、彼はその形の良いくりっとした瞳を見開いて驚きの表情を見せた。


「……どういたしまして」


俯きながらも一言だけそう呟くと、九嶋くんは寝室を出て行った。

心なしか、耳が赤くなっていたような気がする。


「どうしちゃったんだろ、九嶋くん……」

「茜ちゃん、分かんないの?」

「……何が?」


「自分には全然懐かないなーって思ってた猫が、いきなりすり寄ってきたらめちゃくちゃ可愛いでしょ?」


「……だから、何が?」


「今の智晶ちゃんの気持ちだよ」
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