ベビーフェイスと甘い嘘
……ますます分からないんだけど。
「九嶋くん……猫好きなの?」
「……そう来たか。まぁ、今の茜ちゃんには難しい話かもしれないね。さ、帰ろう」
促されるまま立ち上がりリビングの方へ行くと、何故かドアの近くで九嶋くんがうずくまって笑っていた。
「……どうしちゃったの?九嶋くん」
ほんとに、どうしちゃったんだろ?
「ははっ……ちょっと今話しかけないでくれる?……あー、お腹痛い」
そんなに丸くならなきゃいけないくらい、面白い事話してたっけ?
まるで、九嶋くんが猫みたいじゃない。
そう言えば、この前チークを失敗してインコになった時もこんな風に笑われたっけなぁ。
九嶋くんの笑いのツボってちょっと人と違うか、凄く浅いかのどっちかだと思う。
ひとしきり笑って、九嶋くんはようやく顔を上げた。
「芽依さんの例え、サイコー。……そういう芽依さんだって、めちゃくちゃ猫『ちゃん』を溺愛してるでしょ?」
「当然よ。目に入れても痛くないほど愛してるわよ。それにね、よく懐いてると思って油断してると、たまーに引っ掛かれるから、余計に可愛いのよ……猫『さん』はね。もうちょい懐いたら、智晶ちゃんもこの可愛さが分かるよ」