ベビーフェイスと甘い嘘

恐縮する私にオーナーは「困ってる時はお互い様だよ。樹が何でも利用していいって言ったんだろう?だからこれも、利用の内なんだから気にする必要はないよ」


「まぁ私が着いて行くのが、ボディーガードとしてもちょうどいいんじゃないかと思うしね」


そう言って軽くウインクをした。


仕草はちょっとしたジェントルマンだけど、そんなオーナーの風貌は角刈り短髪に色の入った眼鏡と派手な色柄シャツをいつも身に付けている。


恰幅も良いほうで、これで顔に傷でもあったらまんまドラマやコントで見かけるような、その筋の方に見える。


……確かに、これ以上のボディーガードはいない。


「樹はさ、素直じゃないからそんな言い方しかできなかったんだろうけど、柏谷さんの事も翔くんのことも心配で仕方ないみだいだからね。ほんとうはね、困った人を放っておけない優しいヤツなんだよ」そう微笑みながら教えてくれた。


半分ほど叔父の欲目フィルターがかかっていて『優しいヤツ』という言葉には全く賛同できなかったけど、困った人を放っておけない人、というのはなんとなく理解できた。
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