ベビーフェイスと甘い嘘
***
「ちょっと、茜ちゃん!帰って来なさい!」
パン!と目の前で手を叩かれて、意識が引き戻された
「あ、ごめんね千鶴ちゃん。ちょっと考え事してた」
「あたしの話を聞かないで考え事なんて、いい度胸してるわね」
「……わぁ、痛い痛い。ごめんってば」
ふにふにと軽く私の頬を摘まみながら、怒ったふりをする千鶴ちゃんに笑いながら謝った。
今日は平日の午前中。私と千鶴ちゃんは二人で『pastel』に来ていた。
「ねぇ千鶴ちゃん、話って何?」
一通りの近況を話終えてからそう問いかけた。今日は千鶴ちゃんに話があるから『pastel』に行こうと誘われたのだ。
私が話し合いをする時に『pastel』を利用するのは、実は千鶴ちゃんの影響だったりする。
つまり千鶴ちゃんが『pastel』で話をしたい、と言うのはイコール誰にも聞かれたくない話をするからね、という意味だ。