ベビーフェイスと甘い嘘
だけど、私のそんな考えなんて千鶴ちゃんはお見通しだったらしい。
「まず私達に何も言わないで帰るのがおかしい」
「いつもの茜ちゃんだったら、私達が心配してるのを分かってるから、家に着いたらどんな状態でも一言だけでも必ず返信をしてくれるはずなのに、それも無かった。……だからずっと気になってた」
そのまま千鶴ちゃんはじっと私を見つめたまま、視線を逸らすことなく言い切った。
「直喜くんじゃないの?一緒にいたの。………違う?」
身体中からザアッと一気に血の気が引いた音が聞こえたような気がした。
もう彼女の中で答えは出ていたのだ。結論だけストレートに問いかけられ、とうとう私は言葉を失った。
これでは『そうだよ』と言ったのと同じだ。
「……違わない」
消えそうな声でそれだけを呟いた。
「はぁ……やっぱりそうだったか」
そう言って、千鶴ちゃんは額に手を当てた。
「どうして?……いつ分かったの?」
少しだけ気まずそうな表情をしながらも、千鶴ちゃんは私の疑問に一通り答えてくれた。
「あのね、結婚式の時は一人で帰ったんじゃないなって……ただそう思ってただけだったけど、夏祭りの時に確信した」
「奈緒美ちゃんと直喜くんに会った時、直喜くんとは目も合わせようとしないし、話かけられた時なんか死ぬほど驚いたような顔してるんだもん……」
「直喜くんはともかく、茜ちゃんは知り合いだったって知られたくなかったんだろうなって。そう思ったら何かピンときた」