ベビーフェイスと甘い嘘
「直喜は結婚式の前からコンビニに来てて……私の事知ってたみたいだったけど私は知らなかった。『ウサミ』にも私は行ったことが無かったから、私は直喜が奈緒美ちゃんの旦那さんの弟だってことも知らなかった。……結婚式の日に初めて話をしたの」
「……じゃあ、話をして……そのまま、って事?」
頷く私に、千鶴ちゃんは驚いた顔をしていた。私がそんな行動を取るなんてこうして確かめるまでは、どこか信じられなかったんだと思う。
「……まぁ深くは聞かないけどさ。修吾さんに責められても仕方の無い事を茜ちゃんはした、ってことで間違いないんだよね?」
「……うん」
「修吾さんと別居することになったのって、浮気がバレちゃったからなの?」
夫と子どもがいながら若い男と浮気をして、夫に責められた馬鹿な女。
端から見たらそうとしか見えないのだろう。
だけどそれだけじゃない。私の周りも修吾の周りも、もっと複雑で……たぶん、泥沼だ。
私は、静かに首を横に振った。
「浮気は疑われたけど、直喜との事を疑われた訳じゃないの。夏祭りに誰と一緒に行ってたんだって修吾に聞かれて……詮索されたくなかったから嘘をついちゃったの。芽依と亜依と職場の人と一緒に行ったって。職場の人は女性だよって。あの時私、浴衣着てメイクも普段と変えてたでしょ?あれね、九嶋くん……この前一緒にいたコンビニの人ね。あの人が全部やってくれたの。着付けも、メイクも」
「九嶋くんとは疑われるような事は何にも無いんだけど……修吾にね、『男の為に着飾ったんだろう』って言われて……一瞬だけ九嶋くんに迷惑がかかっちゃうかもって思って黙っちゃったら、それを修吾に誤解されちゃったの。『やっぱりな』って。ろくに話もしないうちに責められた」
「……それとね、もっと前から修吾とはもうダメなのかもしれないって思ってて。……でも翔の為とか家族の為とか自分に言い訳ばかりして……ずっと気がつかないふりをしていたの。本当はずっとずっと苦しかった」