ベビーフェイスと甘い嘘
心に秘めた想いを遂げたあの日に……
私は今まで自分がいかに修吾と愛の無いセックスをしていたのか、ということを思い知らされた。
夫婦として5年間共に過ごしてきた人よりも、その日に知り合って半日も一緒に過ごしていない男のほうが私自身を求めているような気がした。
修吾の気持ちはもう自分には向いていない。
……いや、最初から気持ちなんてありもしなかったんだ。
知っていた。
本当は分かってた。
私はずっと前から気がついていながら、それを認めるのが怖かった。
身体は昂って火照って乱されていくのを感じながらも、心は身体に追いつかなくて……
どうしようもない哀しみが、涙となって溢れた。
だけど、認めたくない気持ちが、現実を知るのが怖いという気持ちが私に涙の理由を気づかせなかった。
***
「直喜くんは原因じゃないけど、離婚したいと思うきっかけにはなったってこと?」
「たぶん……そうだと思う」
「じゃあさ、茜ちゃんの気持ちは?直喜くんの事は今はどう思ってるの?」
九嶋くんに、芽依に、直喜との関係を知られた時同じ質問をされた。
『どんな関係なの?』『どう思ってるの?』って。
今までは答えられなかった。
でも……
「……たぶん好き、だと思う」
心の底から、絞り出すように口にした。
想いを自覚したら、胸の中にしまっておくことができなくなってしまった。
心は切なくて……酷く苦しい。