ベビーフェイスと甘い嘘
「ああ。しかもこっちが何を入れ忘れたのかも言わないし、いくら聞いても名乗らなかったんだ。若い女性だってのは声を聞いて分かったんだけど……何だかおかしいだろ?」
「メールには……若い男には態度が違うとか、お喋りしてて呼んでもレジに来ないとかそんな苦情がびっしり書かれてたんだよね」
「そうだ。店員ともベタベタして気持ち悪い。不倫してんじゃないかって書かれてたぞ」
「……酷い。私と勤務が一緒の男性店員なんて店長しかいないじゃないですか」
「ああ。……迷惑だよな」
苦々しい顔をしている店長にこっちだって迷惑ですけど!と言いかけて、ふと『店長と不倫している』と書かれていたあの手紙を思い浮かべた。
「あの……仙道さん」
「何?柏谷さん」
「私って……パッと見、結婚してるように……見えます?」
私の唐突な質問にどういう事?といった顔つきで二人が視線を合わせた。
「うーん…結婚してるように見えるかどうかは置いといて、柏谷さんの事を知らない人が見たら相沢さん……初花ちゃんのほうね。2、3歳しか変わらないようには見えるよね。柏谷さんって相澤店長と同い年でしょ?……それがどうしたの?何か心当たりでもあった?」
仙道さんに逆に質問されて答えに詰まる。
「えっ……と、心当たりと言うか……心当たりは無いんですけど……」
嘘はついていない。本当に心当たりはない。
だけど……たぶん、悪意は私だけに向けられている。