ベビーフェイスと甘い嘘
「『男に媚を売っている汚い女』?……何だよこれ」
「……2週間くらい前からポストにこんな手紙が入るようになったんです」
「……今住んでるマンションのポストにか?」
店長が顔をしかめながら聞いてきた。
「……はい」
「何で、こんな手紙が入ってんだよ」
「分からないんです。もしかしたらコンビニから跡をつけられたのか……」
「バカか!あんたは!!」
大声ではなかったけど、鋭い口調で放たれたその言葉に身体がびくっと震えた。
「どうしてもっと早く言わないんだ!」
「……やっ、だって……何かされた訳じゃ……」
「何かされてからじゃ遅いだろうが。あんただけじゃない。……翔くんにも何かあったらどうするんだ」
そうだ。悪意は何も私だけに向けられるとは限らない。店長の言葉を聞くまでそんな当たり前の事にすら気がつかなかった。
「相澤くん、怖いって」
「……防犯カメラの映像確認してもらうからな」
「ねぇ、僕のこと無視しないでよ。マンションの防犯カメラなんて簡単に見せてもらえないよね?」
「確か事件性があってマンションの管理者が確認するなら大丈夫なはずです。柏谷さんは今うちの事務所があるマンションに住んでますから。管理者はオーナーだし、話が早いでしょう。カメラもオーナーに確認してもらいますよ」