ベビーフェイスと甘い嘘

すぐに店長はオーナーに連絡を入れてくれた。そして仙道さんには事情があってオーナーのマンションに住んでいることを説明した。


説明するうちに思ったより深刻な事態だと気がついたのか、仙道さんの顔が曇っていった。


「何があるか分からないから、あまり一人にならないほうがいいよ」


「……分かりました」


私が何をしたっていうの……もう心当たりを考えることすら放棄したいくらい疲れきっていた。


***

「茜さん……大丈夫でした?」

「あ……うん。クレームのこと聞いたの。でも心当たりが無くて。仙道さんに説明してたら遅くなっちゃった」


こんな感じで大丈夫だろうか。


「茂木は噂は広めるけど、あいつ自体は鈍感だ。相沢は自分の事だけは死ぬほど鈍感だけど、他は鋭い。あまり事情を知ってる奴が増えると犯人を探しにくくなる。色々問題が収まるまで茂木と俺とだけ組んで仕事してりゃいいだろ」


さっき店長に言われたばかりの言葉を反芻する。


初花ちゃんは一瞬だけ何か言いたげにじっと私の目を見たけど「……分かりました。私、揚げ物のほうに行きますね」と、何も聞かずに仕事に入ってくれた。
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