ベビーフェイスと甘い嘘

「……私だって、最初は茜さんの事信じてたんです。でもその人、茜さんは店長ともデキてるって。毎日のようにマンションに通ってるって。自分もマンションの近くに住んでて見かけるから間違いないって……信じられないなら自分で確かめてみろって、しつこく言われたんです」


「だから私……昨日茜さんの仕事が終わる時間に来て、向かいのお店から見てたんです。店の前で待ち合わせて、一緒に帰って、同じマンションに入って行きましたよね?」


それは……タイミングが悪かったとしか言いようがない。


事情を説明したら分かってもらえるかもしれないけど、直喜や九嶋くんや店長との事まで誤解されているこの状況で、私が何を言っても信じてもらえる気がしない。



「智晶ちゃんともこんなに仲良くしてるなんて信じられない。智晶ちゃんって今は夜勤をしてるんでしょ?働いてる時間も違うのに仲良くて、ただの仕事仲間なのに夏祭りに一緒に行くなんて……やっぱりおかしいよ」


「メイクだって着付けだって智晶ちゃんがしたんでしょ?智晶ちゃんも……昔は一緒に働いてる人とこんなに仲良くしてた事なんて無かったのに……」


……やっぱり、奈緒美ちゃんにとって九嶋くんも特別な存在なんだと思えて仕方ない。


彼女の『お気に入り』の中には、九嶋くんも入っているような気がする。
< 341 / 620 >

この作品をシェア

pagetop