ベビーフェイスと甘い嘘
「……奈緒美ちゃんがどう思っても、そのお客様から聞いた話は全部でたらめだよ。……信じてもらえないかもしれないけど、私からはそれしか言えない」
奈緒美ちゃんと直喜、九嶋くんや、直喜のお兄さん達の過去に何があったのかは、私は知らない。
夏祭りの日には、何も知らなくてもいいと思ったけど……
だけど、奈緒美ちゃんの誤解をきちんと解けない事にもどかしさを感じてしまう。
「私ね、今事情があって……あのマンションに住まわせてもらってるの。勿論店長の部屋には出入りしてないよ」
「あのマンションは、コンビニのオーナーさんの持ち物なの。店長だって、事務所として一部屋使ってるってだけで自宅は別にあるし。たまたま昨日は送ってもらったけど、毎日一緒には帰ってないよ」
「子どもでもないのに、どうして昼間に送ってもらう必要があるんですか?」
「昨日はね……お客さまからメールでクレームが来たの。どんな人が送ったか分からないし、ちょっと怖い内容だったから、歩いてここまで来てた私を店長が心配して送ってくれたの」
「たまたまそれを私が見たって事ですか?……そんなの、信じられる訳ないじゃないですか」
誤解を解こうと喋りかけても、すぐに頭から否定されてしまう。
何を言っても信じてもらえない状況に、ため息が溢れそうになってしまった。