ベビーフェイスと甘い嘘
水曜日。私は『pastel(パステル)』という店でナオキを待っていた。
『pastel』はサンキューマートも入っている羽浦駅前アーケード街の中にある喫茶店だ。
サンキューマートは駅近くのアーケードの入り口にあり、『pastel』はアーケードの出口近くにある雑貨屋さんの二階にある。
アーケードを抜けるとデパートと百貨店が並んで立っていて、その道路を挟んで向かい側に市立図書館が建っている。
そこは私が結婚するまで勤めていた職場で『pastel』は裕子姉さんと千鶴ちゃんとよく利用していた。
カフェなんてお洒落な感じでもなく、ランチタイムには懐かしさを感じるナポリタンなんかを頼めたりする昔ながらの『喫茶店』だ。
平日の午前中の早い時間。ここを利用する人はめったにいない。奥まった座席は個室のように区切られているし、BGMが流れているので声が響くこともない。話をするのにはぴったりだ。そう思って選んだのだ。
待ち合わせた10時ぴったりに、ナオキは店に現れた。
紺色のクロップドパンツに、同じく紺のラインが入った白地のボーダーのカットソーを合わせただけのシンプルな格好をしていたけど、長身の彼のスタイルの良さをさらに引き立たせて、嫌みなくらいに似合っていた。