ベビーフェイスと甘い嘘

……いや、むしろこいつを殴りたい。


「……で?どうして私はここに呼ばれたの?」


にやけていても整っているその綺麗な顔を、ど真ん中から殴り付けてやりたい衝動をぐっと押さえながら聞いてみる。


「あ、悪い。あんまり柏谷さんが面白いから忘れるとこだった。……翔くんには見えないように、もっとこっちに寄って」


ぐっとデスクの端まで椅子を寄せられて、パソコンの画面を見るように言われる。


パソコンには、マンションのエントランスを映した防犯カメラの画像が写し出されていた。


「……この人を、よく見てくれ」


一人の女性が玄関から入ってきた。

一見普通のマンションの住人のように入ってきたその人は、ポストの前で立ち止まり……さっと辺りを見回すと、素早くカバンから白い封筒を取り出してポストに差し込んだ。


そして、そのまま振り返る事無く玄関を出て行った。


「先週の木曜日の映像だ。この日が最後だったんだろ?」


2、3日置きに入っていた手紙が、何故か先週の木曜日を最後に来なくなっていた。


「この人に心当たりは?……まぁ、大胆なわりには警戒してるよな。カメラも意識して見ないようにしてるし、帽子も必ず被ってる」
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