ベビーフェイスと甘い嘘
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灯さんに初めて会ったのは、柏谷の家に入籍をしましたと報告をしに行った時だった。
「始めまして。私、修吾くんのいとこの佐藤灯と申します」
お義母さんには初対面で妊娠を責められて、今度はこの人に何か嫌味を言われるのだろうかと内心怯えていた私に向かって笑顔で挨拶をしてくれた灯さんの態度は、とても好意的に思えた。
だけど修吾のきょうだいでもない女の人がどうしてこの場に居るのだろうと不思議に思った。
『修吾くんとは兄妹みたいなものだから、どうしても奥さんになる人を見たかったんです』。彼女はそう言って笑った。
「『アカネ』さん、これからよろしくお願いします。……ふふっ」
その笑顔は、さっき挨拶をした時とは違って、私のことを見下しているようにも見える、何だか含みのある笑顔だった。
そして、その瞬間に私は分かってしまった。
ーー私のしあわせが、信じていた愛が、何もかも嘘だったという事を。
絶望に突き落とされたまま何も言えずに、満足そうにニッコリと笑う彼女のその綺麗な顔を、私はただ眺めている事しかできなかった。