ベビーフェイスと甘い嘘
『あかり』と『あかね』。
名前だけは似ているけど、私たちの姿形は全く似ていない。
修吾が「あかね」と私の名前を呼ぶ度に、あなたは密かに優越感に浸っていたんでしょう?
本当に愛されているのは自分だって……そう思いながら。
二人の関係に疑問を持たないほど恋愛に慣れていない私だったから、あなたは修吾との結婚を認めたんだって。
灯さんは狡い。
離婚する時だって、たぶん修吾の気持ちがまだ自分にある事を確かめて、それから離婚したはずだ。
修吾は狡い所も、したたかな所も、我が儘な所でさえ全て知っていて……それでも灯さんだけを愛している。
「……灯さん。私は修吾に別れたいって言おうとしたよ。でも言わせてもらえなかったの。話し合いたいってメールもしたけど、『絶対別れない』って返って来た」
「嘘!修吾くんがそんな事言うはず無い!……修吾くん言ってくれたもの。全部片付いたら私と……私達と一緒に暮らそうって」
『片付いたら』なんて……ずいぶん酷い言葉。
なら、修吾はどうして話し合いすらしようとしてくれないの?
「『絶対別れない』って言ってるのは茜さんでしょ!?修吾くんの事、もう諦めなさいよ!」