ベビーフェイスと甘い嘘

思わずため息が溢れた。


「……どうしたら灯さんは納得してくれるの?修吾から来たメールでも見せればいい?」


もう夫婦としての繋がりも切れ、家族としての修復も不可能なのに、修吾はどうして別れてくれないのか。


翔のため……?でも、どうして灯さんには一緒に暮らそうなんて言ってるの?


もう修吾の事が分からない。


「私が嘘ついてるって言いたいの?あなたこそ嘘ついてるんじゃないの?!修吾くんと話し合いたいんだったら、家に戻ればいいじゃない!!」


興奮のままに話している彼女は、口を滑らしてしまっている事に、全く気がついていない。


私と翔が修吾ともう一緒に暮らしていないと……どうしてあなたは知っているの?



「修吾くんと早く別れなさいよ!」



……そして、彼女はどうしてこんなにも焦っているのだろう。


今まではどちらかと言うと修吾が灯さんに想いを残していて、灯さんはそれを知りながらも受け入れることはしてこなかったはずだ。


なのに、今は灯さんのほうが修吾と一緒になりたいと望んでいるように見える。


「灯さんはどうして今更修吾と一緒になろうとしているの?何で7年前にそれが出来なかったの?」


想い合っているなら、何を言われても添い遂げれば良かったのに。


そしたら修吾と出会ったとしても、修吾が私に声をかける事も無かったかもしれないし、私が惹かれる事だって無かったかもしれないのに……
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