ベビーフェイスと甘い嘘

嘘をついて、必死に隠してきた気持ちも見抜かれてしまう。


だけど今は……それが苦しくて堪らない。



「話してよ茜さん。一体何があったの?」



此所に一人でいたら立ち上がる気力さえ湧かなかったはずだから、ほんとうは直喜に見つけてもらって嬉しかった。


泣き出しそうなほど辛い気持ちを分かってくれて嬉しかった。


でも……私にはただ優しさをかけるだけなんでしょう?


……それが、いちばん残酷だって、直喜は気がついてない。


優しくされたら、寄りかかってすがりたくなってしまうのに。


直喜の腕の温かさを知ってしまったから、余計に求めてしまう。


……何も知らなければ良かった。


あなたの温もりも、優しさも、その眼差しも。


一度知ってしまったら、今まで一人で我慢していた涙を、堪えきれなくなってしまった。


「……くるしい」


「えっ?」


「苦しいの。ずっと自分に嘘をついてきたから」


「もう嘘をつくのはやめよう、自分の気持ちに素直に生きようって、そう思ったのに……今までついた嘘が見えない所で膨らんで、もう手に負えなくなって…………」


「心が溺れたみたいに、うまく息ができなくて苦しいの……」

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