ベビーフェイスと甘い嘘

もう直喜の前では泣けないから、最後に『愛してない』と嘘をついた。


『好きにならない』なんて……


とっくに惹かれていて、もうどうしようもないくらい好きになってしまっているのに。



悪いのは私だ。


直喜を好きになってしまったこと。


家族を裏切ったこと。


修吾に愛されていないのを知りながら、結婚したこと。


愛されていない現実を、見ないふりをしたこと。


修吾に愛されたくて……子どもで彼を繋ぎ止めようとしたこと。


翔を愛しているの?なんて偉そうなことを思っているくせに、



私がいちばん最低だ。



たぶん……これから私がどんな選択をしても、間違いなく翔を傷つける。




今直喜に言ったように、修吾に初めから「あなたは灯さんのことが好きなんでしょう?」と言える勇気が私にあったなら……



こんな事にはならなかったはずなんだから。


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