ベビーフェイスと甘い嘘
3.
まるで歌声のようだ
***
「あー、びっくりした。びっくりし過ぎてどうしたらいいか分かんなくなっちゃった。拓実もいなかったし……」
「私がいるでしょ!仕事中でも何でも、電話さえくれたら駆けつけてたに決まってるでしょ!」
「もうそんなに怒んないで……先生にもめちゃくちゃ怒られて凹んでるんだから」
「怒られるのは当たり前!自分で車を運転して病院行くなんて……タクシーで行くとか、考えられなかったの?途中で陣痛でも来たらどうする気だったの?!ほんっと、考え無しなんだから!」
心配のあまり、ついついキツい口調で怒ってしまうと、芽依は途端に悲しげな表情になってシュンとしてしまった。
普段は猪のように誰の言う事なんてお構い無しに突っ走る妹だけど、何故か私に怒られるのだけは堪えるらしい。
まるでこの世の終わり、と言った感じで落ち込む芽依をさすがにこれ以上責める気持ちにはなれなかった。
なんせ、彼女はさっき出産を終えたばかりなのだ。
「……まぁ、無事に産まれたから良かったけど。ちょっとは反省しなさい。……芽依、お疲れ様。頑張ったね」
「……うん。茜ちゃんも色々とありがとう」
涙目になりながらも、にっこりと笑ってこう言われると、さっきまでの怒りもまあいいか、という気持ちに変わってしまう。
……ほんと、我が妹ながら得な性格だ。