ベビーフェイスと甘い嘘
『破水しました』
『今病院です。すぐに分娩室に入ります』
『亜依をお願いします』
そんな芽依からのLINEが届いていたのが9時頃のこと。
そんな日に限って仕事終わりまで携帯をチェックしていなかったので、気がつくのが遅れてしまった。
予定日より三週間も早い入院だった。
運悪く出張していた拓実さんに連絡を取って、母に連絡をして、その足で翔と亜依を幼稚園まで迎えに行って……
いつもは私に使う事がない敬語ばかりが並んでいるLINEと、返信に既読が付かない事にどうしようもなく不安な気持ちになって、逸る気持ちを抑えながら病院へと急いだ。
駅前から少し離れた所にある、市の総合病院。
亜依と翔と三人で駆けつけた時には……もう全てが終わった後だった。
「私もびっくりしたけど、茜ちゃんも驚いたよね?ごめんね。……なんだか顔色悪いし」
「……私の事はいいのよ、大丈夫だから。後で母さんも来るって」
「うん。連絡してくれてありがとう」
「私だけにしかLINE送ってなかったなんて、びっくりしたよ。拓実さんも驚いてたからね。後でちゃんとフォローしてあげて」
「何か病院に着いたらほっとして、すぐに陣痛が来たから、茜ちゃんに亜依を迎えに行ってもらわなきゃって……それしか考えられなかったんだよね」
「それに、茜ちゃんなら拓実やお母さんに電話してくれると思ってたからね」