ベビーフェイスと甘い嘘
確かに私達は、まだ一線を越えていない。
正確に言うと……『繋がる』以外のコトは散々されたんだけど。
でもそういうコトになる直前、私は彼の前で涙を流したのだ。
自分でもどうして涙が出てきたのか分からずに、その時はただただ混乱した。
溢れ出した涙は止まらず、肩を震わせてしゃくりあげるように泣く私を見て「そんなに泣かれたらこれ以上できないんだけど……」と彼は私を抱くのをやめて……泣き疲れた私は眠ってしまった。
そして、そのまま朝を迎えてしまったのだ。
……私達って、どういう関係なんだろう。
例えば、ここで二人でいるのを夫に見られたとして、「こいつは何なんだ?」と聞かれたら、「誤解しないでね。彼はオトモダチ」……なんて白々しい事は決して言えないくらいの関係ではある。
「アカネさんが泣いたのって、単に俺とするのが嫌だったって訳じゃないでしょ?……だってさ、キモチイイ声いっぱい出してたよね?」
ナオキは声を潜める事も無くそう言い放って、口の端をキュッと上げてニヤリと笑った。
「……っ」
ナオキは、私が感じるままに声をあげるのを、乱れていくのを、今みたいに余裕の表情で楽しんでいたような気がする。