ベビーフェイスと甘い嘘

どんなに日々が辛いと思っても、そこから逃れる術なんてない。


でも、私は修吾からも、灯さんからも、直喜からも逃げ出して向き合うことを避けている。


向き合うことから逃げた私には当然の事だけど、何日経っても苦悩は消えて無くならない。


……それでも朝はやって来て、私はまた日常に放り込まれていく。


私がどんな感情を抱いたとしても、容赦なく日々は回っていく。


独身のうちは感傷に浸って眠れない夜を過ごしたり、ベッドに潜り込んだままダラダラしたり、ご飯なんて抜いちゃったりして……


そうやって、自分に酔った痛い女になることもできるはずだけど……



「ママ、おはよー。おなかすいた」


そんな感情は母親になると持ってはいけないし、表に出すことすらできない。


目の前にいる愛しい存在にご飯を食べさせ、今日も1日元気で明るく楽しく行こうね!と自分も元気なふりをして、私は今日も笑顔で過ごす。


この子の笑顔をずっと見ていたい。
だから私も笑顔でいたい。


心がどんなに傷ついていたとしても。


心の中に涙が溢れて、溺れて、苦しくて悲鳴をあげたとしても、私は決してそれを面に出すことはしない。



だって私は母親で、ただの女になることはできないのだから。
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