ベビーフェイスと甘い嘘

「あれ?茜ちゃん、大丈夫だった?もっとお友達と喋っててもよかったのに……って、顔、どうしたの?真っ赤だけど、大丈夫?何か具合でも悪いの?」


「だっ……大丈夫。もう話は終わってたから」


終わってはいなかったんだけどね……


急に焦ってしどろもどろになった自分は、二人の目にかなり怪しく映ったに違いない。


それでも、あのまま九嶋くんの話を続けることが、私にはどうしてもできなかった。


九嶋くんに告白をされたあの日から、私は彼とまともに話をしていなかった。


九嶋くんはいつものように普通に話しかけてくるのだけど、私が今みたいに逃げてしまって全く会話ができないのだ。


私が今までどんな感じで会話していたか忘れてしまうほど動揺しているのに、九嶋くんはあの日のキスなんて忘れてしまったみたいに、あまりにも普通で……


……違う。私が大人げない態度を取っているだけで、九嶋くんは普通に接しようとしてくれているだけなんだよね。


私が目を逸らしたり会話から逃げると、彼はちょっとだけ寂しそうな顔をする。



そんな顔をさせているのも、傷つけているのも自分だって分かってるくせに、私は九嶋くんと向き合うことができない。



……向き合うのが、怖い。
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