ベビーフェイスと甘い嘘

鞠枝さんは退院後実家には戻らず、すぐに仙道さんと暮らすアパートへと戻ったそうだ。


「だって、家に帰ってもお父さんしかいないんですよ?お父さんと比べたら、善ちゃんのほうがマシです」


……なんて、かなり前オーナーと仙道さん両方とも気の毒に感じてしまう理由だったけど。


「きゃあ!赤ちゃん、可愛いっ!何て名前ですか?レイくん?レイくーん、こんにちはー。……抱っこしてもいいですか?」


「だめよ、唯ちゃん。玲くん眠ってるんだから」


「じゃあ、写メ撮らせて下さいっ」


いやいや、気配を感じたら起きちゃうものなんだけど……

と苦笑しつつも、すやすや眠る玲くんが可愛くて、私まで思わず写メを撮ってしまっていた。


「初花ちゃんに見せてもいい?」


3人でおいでと誘われていたものの、初花ちゃんは10月に入ってからもやっぱりお休みが無く、今日は唯ちゃんと二人で鞠枝さんのアパートを訪ねていた。


初花ちゃんが来られなかったのは残念だったけど、鞠枝さんと二人きりにならなかった事には、正直ほっとしていた。


……と思っていたけど。



「じゃあ、私課題があるので帰りまーす」


鞠枝さんの部屋に入ってすぐにカメラマンのように色んな角度から玲くんの写メを撮ること30分。


今日はこれから学校に行くんで、と彼女はあっという間に帰って行ってしまった。

< 400 / 620 >

この作品をシェア

pagetop