ベビーフェイスと甘い嘘
そう言えば、いつも朝日勤から夕勤まで広くシフトに入ってくれるから忘れそうになるけれど、唯ちゃんは美術短大に通う学生さんだった。
「……相変わらず賑やかな子ですよね」
「……そうね。黙ってれば美人なのに」
ほんと残念な子……と二人で顔を見合わせて苦笑いをした。
「ところで、茜さん……さっきの話どう思います?」
ひとしきり笑った後で、鞠枝さんがぐっと私のほうに顔を寄せて、囁いてきた。
『さっきの話』とは、唯ちゃんが帰り際に落として行ったとんでもない爆弾情報の事だろう。
確かにびっくりしたけど……私は、鞠枝さんにこの前の事を聞かるんじゃないかとずっとヒヤヒヤしていたから、このまま鞠枝さんがこの話題だけ考えててくれれば、私は何も聞かれずにあっさり帰れるかもしれないと、ちょっとだけ唯ちゃんに感謝をしてしまった。
『そうそう。店長と初花さん、絶対に付き合ってますね!ふふっ。ワ・タ・シ、二人が資材庫でチューしてるの、この目で見ちゃいましたー!!』
ニコニコと満足そうに満面の笑みを見せながら、爆弾スピーカー娘は去って行ったのだ。