ベビーフェイスと甘い嘘
「見間違いとか、唯ちゃんの勘違い……って訳じゃなさそうですよね」
「そうね。付き合ってたとしても、二人とも言いふらすタイプじゃないし、資材庫でキスしてたってのが本当っぽいよね。カメラも無いし」
しかし意外だった。初花ちゃんはともかく、あの店長が職場でいちゃつくタイプの人間だったとは……
「もう!私何にも知らなかった!!」
初花ちゃんから聞かされていなかったことが、よっぽどショックだったのだろう。
「やだー、何か生々しい!!」
どこまで何を想像しているのやら……ギャーと叫びながら鞠枝さんはブンブンと頭を振りまくっていた。
玲くんを起こさないように、と気を遣っていたのが馬鹿らしくなるくらいの騒ぎっぷりだ。
「やだー、はこっちが言いたいわよ。私なんて二人と顔付き合わせて資材庫にも行くのよ。やりにくいったらないわ」
私が現場を見た訳じゃないけど、職場で……ってのはほんとに勘弁して欲しい。
顔をしかめた私を見て、鞠枝さんはゲラゲラと笑いだした。
「ははは。想像しちゃいますよね……でも、資材庫にもカメラはありますよ?普段はモニターに映ってませんけど、切り替えたら出てきますから」