ベビーフェイスと甘い嘘

「…………えっ!」


……嘘でしょ。


「あ、これ言っちゃいけなかったんだった!資材庫ってスタッフしか行かないから、みんなから分からない所にカメラがあるんです。経営者しか知らない話なんで、絶対内緒にして下さいね」


「……って、どうしたんですか?凄い慌てて。まさか!茜さんも……資・材・庫で……ナニかを?!」


驚きで目を見開いた私の顔を見ながら、鞠枝さんはニヤリと笑った。


……何だか、凄い勘違いをされているような。


「何かって、何よ。ただ、資材庫には防犯カメラが無いって聞いてたから、びっくりしただけ」


嘘は言ってない。


私は防犯カメラが無いって聞いていただけで、資材庫では……誰とも何ともなってない。


店長に診察まがいの事はされたけど。


あの出来事は、もう私の中で『熱があったので、何も考えられなかった』という事でカタがついているから、ノーカウントだ。


店長は資材庫にカメラがある事を知ってて、どうしてわざわざ『カメラが無い』って私に嘘をついてまで、あんな事をしたんだろう。


鞠枝さんには、妙な誤解をされたみたいだし……


とにかく、この件は後できちんと確認しないといけない。


「まあ……初花ちゃんには私から『気をつけて』って言っておくけど……問題は唯ちゃんね。あの様子じゃ、明日にでも言いふらしそうだから、釘刺しとく。任せといて」


苦笑しながら言うと、鞠枝さんは驚いたような顔になった。
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