ベビーフェイスと甘い嘘

写真には、今よりちょっとだけ若い鞠枝さんと、苦笑いを浮かべている初花ちゃんと、他に二人の男の人が写っていた。


「鞠枝さんも、初花ちゃんも変わらないね。羨ましい」


若いって、ほんとに羨ましい……


心の底から出た言葉だったけど、鞠枝さんは「冗談やめてくださいよ」と渋い顔で呟いた。


「……茜さんが、それ言います?私、茜さんの年になってもその姿形でいられる自信、全く無いんですけど。……それよりも、この写真で見てもらいたいのは、こっち」


「九嶋ちゃん写真嫌いだったから、まともに写ってるのってこれくらいかも」


「……えっ?九嶋くん?!この人が??」


鞠枝さんが指差す先を見て驚いた。いちばん右側で半分顔を隠すように迷惑そうに写っている人は、よく見ると確かに九嶋くんだった。


「今とずいぶん違うね。……何か……凄く、似てる」


今の九嶋くんの髪型は、くせのあってふわふわしている黒髪だけど、写真では茶髪で短い髪型だった。


ノンフレームの眼鏡をかけたその姿は……店長にどことなく似ている。
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