ベビーフェイスと甘い嘘
「それから半年くらい、初花ちゃん私の家にいたんです」
「初花ちゃんは、私の家族で、妹です。だから、しあわせになって欲しい……それが、母の願いでもあるんです」
生方さん一家は、初花ちゃんを本当の家族のように可愛がっていた。
鞠枝さんと歳が近く、独り暮らしで頑張っている初花ちゃんを思いやっているのかと思っていたけど、こういう事情があったんだって納得した。
「4年前の写真か……九嶋くんがお店を辞めたのって、この写真を撮った後くらい?」
「そうです。……辞めたって、九嶋ちゃんから聞いたんですか?」
鞠枝さんは私の言葉に、驚いていた。
「私は……九嶋ちゃんの事は、詳しい事情は分からないんです。でも、何か凄く辛い事が起きたんだと思います。前はよくお友達や彼女さんが来てたんですけど……ある日突然来なくなったと思ったら、九嶋ちゃんも突然いなくなっちゃったから」
初花ちゃんが店を休んでいた半年の間に、九嶋くんも突然店を辞めてしまったらしい。
だけど辞めて数ヶ月経った頃、九嶋くんはお店に戻って来た。
夜勤をしていた馨さんが、本社にエリアマネとして正式に採用される事が決まり、夜勤をする人を探していて馨さんが直接声を掛けたようだった。
そのまま九嶋くんは夜勤のスタッフとしてまた働き始めたそうだ。