ベビーフェイスと甘い嘘
こんな風に歯に衣着せず正直な物言いをする彼女を、以前は少しだけ苦手に思っていた。
だけど、ちゃんと向き合って会話をすると、その潔い態度に好感を持った。
「鞠枝さんは……ほんと、真っ直ぐで素直な人だよね。羨ましい」
「私ね、ずっと鞠枝さんと初花ちゃんのことを羨ましいって思ってたんだ。二人とも若くて、綺麗で、お客様に好かれてて……正直、嫉妬してた。それに、二人とも姉妹みたいに仲が良かったしね」
鞠枝さんには正直な自分で向き合いたい。そう思ったら今まで隠していた本音もさらりと口にする事ができた。
素直な彼女に、少しだけ感化されたのかもしれない。
「そうだったんですか?じゃあ今日から仲良くしましょうよ」
あっさりと言われて驚いた。
この年になって何を?と思われそうだけど、私は未だに人との距離の縮めかたが分からないでいるから。
「……そんな感じでいいの?」と思わず聞くと、
「そんなもんですよ。今日から私達は『元仕事仲間』じゃなくて『友達』です。いいですね?お店での初花ちゃんの様子も気になるから教えてくれる人がいるのは嬉しいですし。それに……」
「それに?」
「お母さんの先輩が友達になってくれるのは心強いです」
そう言うと鞠枝さんはにっこりと微笑んだ。
「私のほうこそ、よろしくね」
気がついたら、私も鞠枝さんと同じように微笑みを返していた。