ベビーフェイスと甘い嘘

『私から話すまで』って事は、気持ちの整理ができたらきちんと店長との関係を話してくれるって事なんだろう。


「唯ちゃんには、もう釘刺しといた。初花ちゃんは鞠枝さんとちゃんと話しなさいね」



正確に言うと、もう釘が『刺さっていた』んだけど、詳しく話しをするのは止めておいた。


これ以上話を続けたら、初花ちゃんが首だけじゃなくて、全身真っ赤に染まってしまう。


***


私が鞠枝さんに会った翌日のシフトは、唯ちゃんと一緒の朝日勤だった。


「おはよう。あのね、唯ちゃん昨日の話なんだけど……」


朝イチで唯ちゃんを捕まえて、昨日の事を話しかけようとしたら、「もう誰にも言いません!ごめんなさい!!」と、彼女は半泣きでスタッフルームを飛び出して行ってしまった。


「??」


「ねーさん、おはよ」


首を捻る私を見てニコニコと笑いながら、九嶋くんがスタッフルームに入って来た。


「おはよう、九嶋くん。……唯ちゃん、どうしちゃったの?」


「何かまた余計な事を言いふらしそうだったから、止めといた。相沢と店長の事、ねーさんはもう知ってるんだよね?」


誰かに話す前に釘を刺しとこうと思っていたのに、どうやら、もう九嶋くんに向かってスピーカーのスイッチが入ってしまっていたようだった。
< 416 / 620 >

この作品をシェア

pagetop