ベビーフェイスと甘い嘘
「ほら、亜依、翔、もうすぐ着くよ」
私の言葉に亜依は元気に「はーい」と返事をしたけど、翔は唇を噛み締めてうつむいてしまった。
自分と違う幼稚園に通う亜依には、翔が知らない友達がいて、知らない日常がある。
どうしようもないと分かっていても、歯痒いのだろう。
駐車場に車を停めて、校庭に向かう。亜依の幼稚園は、いつも近くの小学校の校庭を借りて運動会をしている。
亜依のクラスの場所が、校舎や遊具の近くにあってほっとする。少しでも翔が時間を潰せる場所が多くあるのに越したことはない。
レジャーシートが広がる、カラフルなグラウンドをぼんやりと眺める。
再来年……翔はこの学校に通うことは出来るのだろうか。
今年の正月に、お義母さんから今の幼稚園と同じく附属の小学校にそのまま進む事をそれとなく勧められていた。
お義母さんに言われるまま、今の幼稚園を受験させた事を今更後悔している。
仲良しの友達と離れて、二年経っても馴染めなくて……
流されるまま、言われるままここまで来てしまったけど、私だけじゃなくて翔の人生にまで影響を与えてしまっている。