ベビーフェイスと甘い嘘
そんな翔の無邪気な笑顔に、涙がこぼれ落ちそうになる。
……翔のあんな嬉しそうな顔、久しぶりに見た。
やがて翔は、テントの側までやって来ていた私に気がつくと、「ママー!」と笑顔で駆け寄って来た。
「ママ!ナオキがね!ぼくといっしょにはしってくれたんだよ!ぼく、いっとうしょうだったんだよ!みてた?」
興奮が覚めない様子で私に話しかける翔の様子を、直喜はじっとテントの中から眺めていた。
やがて私と視線が合うと、直喜はペコリと頭を下げて校舎の方へと歩いて行ってしまった。
「……どうして」
『どうして、ここにいるの?』
声にならない私の呟きまで耳にした様子で、翔が話し出す。
「あそこにいたんだよ。ナオキ」
翔が指差した先に、藍いパラソルが見えた。
「……何、あれ?」
「わかんない。ぼくがブランコしてたらナオキがきてくれたんだ。『カケルだよな?』って。『ナオキだよ。はなびであっただろ?おぼえてる?』って」
「ぼくがうんどうかいつまんないっていったら、せんせいにおはなしして、ぼくといっしょにはしってくれた」