ベビーフェイスと甘い嘘
「あの人、『ウサミ』さんですよね?お義姉さん、知り合いなんですか?」
いきなり後ろで声が聞こえて、驚いて振り返る。
「……あ、拓実さん。亜依」
「おばちゃん、かける、もうすぐおひるだよ。さっきみてたよ!かけるも、おにいちゃんもかっこよかった!あのおにいちゃんは、だれのパパなの?」
「ううん。ナオキはかけるとママのともだちだよ!ね、ママ?」
「……あ、うん。そう。お友達だよ。……ウサミさんのね、お兄さんの奥さんが……私の元の職場の同僚なの」
『お友達だよ』と亜依に向かって話をした後で、拓実さんに誤解されないように説明をした。拓実さんは、そうなんですかーと驚いた様子だったけど、それ以上は聞いてこなかったので、ほっと胸を撫で下ろした。
「親子競争の列に、いきなり翔と二人で並びに来たからみんな驚いてましたよ。自分が走り終わって、慌てて回したからちょっとぶれてるかもしれないですけど、ちゃんと撮っておきました」
そう言われて、親子競争の時にビデオ撮影を変わる約束をすっかり忘れて翔を探し回っていた事に気がついた。
「拓実さん、ごめんなさい!亜依のビデオ……」
「あ、大丈夫ですよ。ひろくんのお兄ちゃんに頼みましたから……ま、間違えて他の子が映って無ければいい事にしておきます」
ひろくんは、亜依や翔とも仲良しのお友達で、3人兄弟の末っ子。一番上のお兄ちゃんは中学生だ。私の姿を探していた時に、お兄ちゃんを偶然見つけて頼み込んだらしい。
「後で見て下さい。……翔、凄く楽しそうに走ってましたよ」