ベビーフェイスと甘い嘘
「……っ。……ほんと、いちいち……鋭いのね」
ジワリ、と目の奥が熱くなる。
お盆のあの日から、ずっと生理が来なかった。
今まで確かめられなかったのは、自分の心が弱かったからだ。
あんなに二人目を望んでいたのに、この事実を喜べなかった。
しあわせそうな芽依を、鞠枝さんを、私はちゃんと祝福できたかどうか自信が無かった。
望まれて産まれて来る、奈緒美ちゃんの子ども達が羨ましかった。
もし子どもを授かっていたのなら、修吾の元に戻ったほうがいいのだろうか……そう悩みながらも灯さんに会って、彼女が修吾との子どもを妊娠している事を知って……
あんな風に、乱暴に……ただ欲の捌け口のように抱かれて出来た子どもが、求められて愛された末に出来た子どもに敵う訳がない。
一瞬でもそんな事を考えてしまった自分の心が許せなくなった。
「昨日……やっと……病院に行ったの。検査してもらって……どこも異常はなくて……妊娠もしてなくて……ストレスで止まってしまっただけでしょうって。……だから、自分の為にもストレスの原因にきちんと向き合おうと思って……」
そこまで話すと、また目の奥が熱を持ったから、唇をぐっと噛みしめて涙をとめた。
店長はそんな私を、じっと見つめていた。
「分かった。そういう事なら、いくらでも協力する。前に、俺を利用しろって言っただろ?俺は、あの言葉は信頼している人にしか言わない事にしてる。……仲良くする気はないけど、茜さんの事は信頼してるから」