ベビーフェイスと甘い嘘

「一言、余計なのよ」


涙目のままじとっと睨み付けると、店長はククッと意地悪く笑った。


だけど、ノンフレームの眼鏡の奥からのぞく瞳は、いつもより少しだけ優しげに見えた。



***


「灯さん、私、修吾とは別れます。だけど修吾と話し合う前に、あなたにどうしても聞きたい事があるの」


「……何よ。聞きたい事って」


私は深く息を吐き出すと、大きく息を吸い込んだ。


これから現実を知っても、溺れて息苦しくならないように。




「灯さん。……あなた、今しあわせ?……修吾の事、ほんとうに愛してる?」


「『ウサミ』のお店で私が不倫してるって噂を広げたり、修吾に話したりしなくても……そんな事をしなくても、修吾はちゃんとあなたの事を愛してくれるでしょう?……あなたはどうなの?」



私の質問に、灯さんの顔色が明らかに変わった。

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