ベビーフェイスと甘い嘘

店長に話をした次の日、私は千鶴ちゃんに頼み込んで、奈緒美ちゃんに連絡を取ってもらっていた。


ある写真を見てもらうためだ。


千鶴ちゃんからのLINEがスマホに入る。


『茜ちゃん、ビンゴだよ。この人から茜ちゃんの事を聞いたんだって』


奈緒美ちゃんに見せたのは、灯さんの写真だった。


水族館に行った日、翔にせがまれてスマホで撮った写真。


灯さんと修吾と悠太くんと翔が笑顔で写っている。


まさか、こんな形で役に立つとは思わなかった。



同じ写真を芽依にも見せた。


「茜ちゃん!この人だよ!『ウサミ』で茜ちゃんの事喋ってた人!よく来る人だから、間違いないと思う」


私は結婚式をしていないし、両家の顔合わせだって結婚前に妊娠している事をできるだけ親族には知られたくないからと言われて、私達と母とお義母さんの四人だけで済ませた。


私も修吾も父親を亡くしていたから、結婚前に会った親族なんて灯さんくらいだ。


灯さんと芽依はお互いに顔を合わせた事はない。


だから、灯さんは店で芽依と会っても私の妹だとは気がつかなかったんだろう。


たぶん私が『ウサミ』には行かない事だけを知っていて、大丈夫だと油断していたのかもしれない。


夏祭りで私を見かけたのはたぶん偶然だろうけど、みんなといたのに私だけが直喜と一緒にいたように噂を立てたり、同じような感じで私が浮気をしていると、修吾にも話したのだろう。


直喜と噂になると、周りに派手に広がって私が困るだろうと思って。


……まさか、ほんとうに私と直喜が人に言えないような関係で繋がっていたなんて思いもせずに。
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