ベビーフェイスと甘い嘘
「……どこまで知ってるの?」
灯さんの目が、動揺を隠しきれずに揺れる。
彼女もたぶん、この前までの私と同じ気持ちになっている。
『いい加減な事を言わないで』と、そう言えない後ろめたい気持ちがあるから、何も言えないのだろう。
「……ちゃんとした証拠は何も無いよ。でも、そうなんじゃないかって思っただけ」
灯さんは、ただ愛されたくて、自分だけを見て欲しくて、必要とされたかっただけなんじゃないかって。
それは修吾じゃなくても、誰でも良かったんじゃないかって。
ただ、そう思っただけだ。
「……そうなんじゃないかって思っただけ、か。……ふふっ。あはははっ」
灯さんは私の言葉を聞くと、呆れたように笑った。
「なにが、『あなた、今しあわせ?』よ。何にも知らないくせに」
「元々私が修吾くんと付き合っていたのは、もう気がついているのよね?……私達の付き合いは、おば様に反対されたのよ。いとこ同士で何してるの?って。気持ち悪い事をするのは止めてってね」
「その後、すぐに強制的に見合いをさせられた。もちろん、佐藤の事なんて愛して無かったし、愛すつもりも無かった。でも、悠太が生まれてからは、それなりにしあわせを感じていたわ」
「でも、そのしあわせが全部嘘だったって分かった時の悔しさがあなたに分かる?!」