ベビーフェイスと甘い嘘

「浮気されたのよ。浮気相手の女を本気で愛してるって。子どもができたから離婚してくれって言われた。……悔しかったわ」


「どうして私が捨てられなきゃいけないの?!こっちにだって悠太がいるのに!養育費と生活費は払うって?……そんなの当たり前じゃない!」


「周りからも浮気されて捨てられた可哀想な女だって目で見られて、いたたまれなくて、何もかも嫌になって……そんな時に修吾くんだけは優しくしてくれたから、また好きになってしまったんだもの。仕方ないじゃない。それに、元々私のものだったんだから、返してもらってもいいでしょう?」



「私は悪くない。……私は悪くないんだから!!」



涙を流しながら感情のままに捲し立てる灯さんの事を、信じられない気持ちで眺めていた。


私には……きっと、灯さんの気持ちは一生理解できない。


灯さんの言葉は、全部独りよがりの身勝手な言い訳に聞こえてしまう。


最初に修吾を愛する事を諦めたのは、あなただ。


自分から修吾に愛される事を放棄したくせに、都合良くまた愛されたいだなんて……


そんな身勝手なあなたの感情なんて、分かりたくもない。


ただ思いのままに涙を流せるその心や、欲しいものは欲しいと言えるその素直さだけは、ずっと羨ましいと思っていた。


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