ベビーフェイスと甘い嘘

……やっぱり、この人は何も分かってない。

たぶんあなたとも修吾とも、もう一生分かり合う事は無い。



「……さっきから聞いてれば、ずいぶん頭の悪い発言だな」


それまでなり行きを見守るように黙っていた店長が、急に口を開いた。


「茜さん、この人は何でこんなに嬉しそうなんだ?まさか、今の茜さんの言葉を聞いても、まだ自分のほうが上だって勘違いをしてるのか?」


「アカリさん。頭の悪いあんたにも分かるように、俺が説明をしてやろうか?……もう、二人の立場に上も下も無いんだよ。あんたはもう、この人に関わる権利を失ったんだ。茜さんは、旦那を見限った。古い言葉で言うと三行半ってヤツだ。もういらないって捨てた物を……おこぼれを拾って手に入れただけのあんたが、何でまだ上から物を言えるんだ?」


ーー痛烈な批判だった。


いきなりの店長の言葉に、灯さんは真っ青な顔色になってから、すぐにまた怒りで頬が赤く染まった。



怒りを露にする灯さんを制して、まだ店長は言葉を続ける。



「あんた今、元の旦那から養育費どころか生活費までもらってるって言ったよな?」


「茜さんの旦那と急いで再婚したがってるのは、元の旦那に妊娠した事を知られたら、生活費を減らされると思ったからじゃないのか?」
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