ベビーフェイスと甘い嘘
店長の顔は怒りを堪えているようでもあり、また少しだけ寂しげな表情にも見えた。
店長の両親の離婚は円満離婚だったとは言っていたけど……実際何も問題が無かった訳じゃないんだろう。
必ずどこかで、誰かは傷ついているはずだから。
辛い過去の記憶を思い出してしまうかもしれないのに、こうして最後まで立ち合ってくれた店長には感謝している。
「やっと、『別れてください』って言えた……。あなたに頼んで、本当に良かった。……ありがとう」
まだ何も解決していないけど……それでも一歩踏み出せた。
「それは、どうも。……しかし、あの旦那も情けない奴だな。都合の悪い事は全部先伸ばしにしやがって。今日だって、最初は仕事があるだの、何で話し合わなきゃいけないんだ、だのブツブツ文句言いながらだいぶ渋ってたんだけどな。暴力をふるった証拠があるってそれとなく言ったら、あっさり折れやがった。……あんな奴のどこが良かったんだ?」