ベビーフェイスと甘い嘘

心底呆れた口調の店長に、私は苦笑いをするしかなかった。


確かに恋に免疫が無かった私は、ただ優しくしてくれただけの人を好きになったと勘違いをしてしまったのかもしれない。


だけどそれだけじゃ寂しすぎる。修吾の気持ちがどうであっても、私は精一杯恋をして好きになった人に愛を注いだんだって。そう思っていたい。


「……どこが良かったかなんて、今はもう分からない。それでもね、私は間違いなくあの人の事が好きだったのよ。向こうの気持ちは最初っから全部嘘だったとしても……優しくて、温かくて、しあわせだった記憶はちゃんと私の心の中にはあるんだもの。だって、理屈じゃないでしょう?誰かを好きになるのって」


「確かにそうだな。理由なんか無くても、どうしても惹かれてしまう気持ちは……俺にも分かるよ」


お互いに前を向いて歩きながら話をしているから、店長の表情は分からない。でもこの人も何かを抱えながら、それでも恋をしているのは声だけでよく分かった。


「……ま、これで精神的にはだいぶ楽になるんじゃないか?これからも、何か辛い事があっても絶対に一人で抱え込むなよ。相談に乗るし、胸くらいは貸してやるから」



「結構です。店長は頼りになるけど……胸まで借りるのは、さすがに初花ちゃんに悪いから」
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