ベビーフェイスと甘い嘘
素敵な歌を聴かせてあげる
金曜日。
ナオキが待ち合わせで指定したのは、駅前商店街から少し離れた住宅街に近いコンビニだった。
羽浦の駅は翔の幼稚園とは距離がある。けど、駅前で待ち合わせて誰か知ってる人に見られたら面倒だな、と思っていたのでこの場所での待ち合わせに内心ほっと胸を撫で下ろしていた。
待ち合わせの時間より少し遅れてコンビニに現れた彼は、初めて会った日と同じような色合いのスーツを着ていた。
『ウサミ』の従業員さんってスーツ着るの?
そう疑問に思ったのが分かってしまったのか、彼は自分を指差しながら言った。
「今日はちょっと用事があったから」
気になる?と聞いてきたので、首を横に振った。
確かに気にはなったけど、そんなに詮索したいほど今のところこの人に興味はない。
「傷ついちゃうなぁ」
ナオキは笑いながらそう言うと、
「さ、行きましょ」
と私に向かって手を差し出して来た。
「何?」
「今日はデートでしょ」
手、繋ぎましょ。邪気のないにこやかな笑顔でそう言われると仕方ないな、という気持ちになった。
彼の手のひらに自分の手をポンと乗せてみる。
「アカネさん……それじゃ、犬がお手をしてるみたいだよ」
「何よ、お手って……」
犬扱いされてムッとしている私に、笑いながらこうでしょ?と、ナオキは指を絡めるようにして手を繋いできた。