ベビーフェイスと甘い嘘

その様子を横目で見ながら、はぁと大きなため息をついた。


「……源さんは、中に行かないんですか?」


私の刺すような視線なんて気にもしないで、のんびりと喫煙スペースのベンチに腰かけている源さんに声を掛ける。


いつもなら「よう!初ちゃん」なんて、陽気に片手を上げて挨拶しながらすぐに店に入るくせに。


……こんな所で何をこそこそ二人で初花ちゃんの心配をしてるんだか。


「今日はいいんだよ。初ちゃんとは仕事が終わってから約束をしてるから。俺はもうちょいここでのんびりしてるよ」


「源さんって煙草吸わないですよね?どうしていつも、ここにいるんですか?」


ずっと不思議だった。一度も煙草を吸っている所を見た事がないのに、よく源さんはここに座っている。


「ここは、サロンみたいなもんだからな。いろんな人とここで会って話をする。それが、じーさんの元気の素だ。……それにな、ここにいると普段見えないものがよーく見えるんだよ」


普段見えないもの?意味が分からなくて、思わず首を傾げてしまう。


そんな私の様子を見て、源さんはニヤリと笑った。


「ほら、ここに座ってごらん」
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