ベビーフェイスと甘い嘘

言われるままに源さんの隣に座った。

「店のほう、見てごらん」


「……あっ」


このベンチに座っていると、立っている時よりも本棚の隙間から店内やレジの様子がよく見えることに気がついた。

今はちょうど、コーヒーマシンの側のレジに立っている初花ちゃんが、オーナーと会話をしているのが見えていた。


「ここから、いつも見てるんですか?」


「ま、たまにちょこちょこっとな。……しかし、初ちゃん顔色が悪いなぁ。元々色白なのに、今なんて青っ白くなっちまってるじゃねぇか。……樹ちゃんと喧嘩したのがそんなに辛いなら、早く仲直りしちまえばいいのになぁ」



確かに今、初花ちゃんは酷く落ち込んでいる。


店長と一緒にエリア会議に行ってからだ。


エリア会議で、初花ちゃんがカオルさんと再会した事は鞠枝さんから聞いていた。


そして、その時に動揺した初花ちゃんを庇うように咄嗟に店長が支えた事も、初花ちゃんが店長と付き合っていると言ったという事も。


二人がやっぱり付き合っていたとして、初花ちゃんは店長にカオルさんとの関係を話していた……?でも、それだと私がカオルさんに会った事を初花ちゃんには言わないでくれと店長が言った事の説明がつかない。


……どうして店長は、初花ちゃんにカオルさんの話をしてはいけない事を知っていたの?


初花ちゃんと店長の間に何があったんだろう……
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